この記事では、辻村深月さんの著書『光待つ場所へ』の紹介、読んだ感想をまとめています。
こんにちは、すっちー(@succhi104)です。
今回は辻村深月さんの『光待つ場所へ』を読み終わったので感想や魅力を紹介していきたいと思います。
現状に悩んだり行き詰まっている主人公たちが、次への扉を開く瞬間を描いた五編の短編集。
少年・少女たちの青春物語を堪能したいあなた、ぜひ一度手にとって読んでみてはどうでしょうか?
『光待つ場所へ』はこんな方にオススメの小説ですよ┌|∵|┘
- 悩みがある人
- 背中を押して欲しい気持ちの人
- 学生さん
- 辻村深月さんの作品が好きな人
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Contents
『光待つ場所へ』本の概要
大学二年の春。清水あやめには自信があった。世界を見るには感性という武器がいる。自分にはそれがある。最初の課題で描いた燃えるような桜並木も自分以上に表現できる学生はいないと思っていた。彼の作品を見るまでは(「しあわせのこみち」)。書下ろし一編を含む扉の開く瞬間を描いた、五編の短編集。(講談社文庫)
『光待つ場所へ』は2010年6月10日に出版された小説です。
文庫本のページ数は約400pですが、五編の短編集になっていますので一作品は約80pとなっています。
他作品で登場する脇役たちが主人公になったスピンオフ短編集になっており、辻村作品を過去から読んでいる方はより一層楽しめる作品に!
すっちー
収録作品は、
- しあわせのこみち
- アスファルト
- チハラトーコの物語
- 樹氷の街
- 冷たい光の通学路
です。
すっちー
大学の文学部で学びながら絵画教室に通っている清水あやめが、授業で出会ったある作品から圧倒的な敗北を感じるところから物語が始まる「しあわせのこみち」。
恋人と別れた大学生・藤本昭彦が、彼女と行くはずだったベルリンにひとりで訪れる「アスファルト」。
芸能界の端っこにいる自分を、何重も何重も些細な嘘で塗り固めつづけているある女性が語る【がんばるワタシの物語】「チハラトーコの物語」。
クラスの合唱会を通して、あるひとりのクラスメートの知られざる一面が浮き彫りになっていく「樹氷の街」。
ふたつの小学校の風景を通してある登場人物の未来が描き出されていく「冷たい光の通学路」。
辻村深月さんの著書紹介
辻村深月さんの有名作品は数知れずありますが、私が読んだことがあるのは『かがみの孤城』くらいかもしれません。
『かがみの孤城』は第15回本屋大賞を受賞しているのでかなり有名かと思います。
その他にも『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞受賞、『ツナグ
』で第32回吉川英治文学新人賞受賞など様々な賞を受賞しています。
すっちー
辻村深月さんの著書『冷たい校舎の時は止まる』の書評はこちら↓
『光待つ場所へ』感想
誰もが一度は思う「自分は特別」という気持ちを描く
すっちー
私はあります、誰しも一度は思ったことがあるんじゃないでしょうか?
辻村さんの『光待つ場所へ』はそんな「自分は特別」という思いをありありと文章で表現してしまいます。
例えば、主人公のあやめが高校生の時に下校途中で感じていた日常の道の良さに、同級生の男子も同じように感じていたと気づくこんな場面がある。
それは、「彼が選ばれた人間であった」という驚きではなく、普通の人だと思っていた彼らにもそうした感性が存在するということを知った驚きだった。口に出さないだけで、彼らだって気がついている。
そう思うと、今度は逆にそれをことさらに感動していた自分自身が滑稽に思えた。しかし、気づいてうんざりしてもなお、私は自分の感性を誇るのを今でもやめられない。
「人と違う」こと、「普通出ない」ことにハマる。酩酊する。そして、この酩酊に周囲が気づいているかもしれないと脅える。時折、自嘲気味に笑う。私はイタイ人種だろうか。(p.30-31)
自分だけが知っていた、気づいていたと思っていたことが、実はそんなことはなく周りも気づいている。
それでも「自分だけにしかない特別な感性」を信じて酩酊してしまう、この気持ちが非常に共感できました。
大人になって気づいた「自分は特別ではない」という現在に本書を読んで、高校生の時に感じたあの「特別感」を懐かしいと思ったそんな瞬間。
あの頃の思いを客観的に見る、そんな体験ができたシーンでした。
それは「自分の意思」なのか「社会に動かされているのか」
自分の意思でやっていると思っている行動が、実は社会に動かされて行動しているのかもしれない。
こんな風に考えたことのある人はいるでしょうか?
暑い夏の日に募金活動をしている子供に寄付をした主人公が、友人から「人がいい、上辺しか見ていない」と言われた時に考えたシーンが以下です。
自分が募金した理由を、蝉の声が降り注ぐ八月の空の下で考えた。いい奴ぶりたいからとか、こいつが言う通り『ありがとう』と言われるそれが一番楽だからだとか、いろいろな理由を思いつく。そして、それらのどれもが少しずつ当たっていて、少しずつ違っている気がした。
ああ、嫌だな。
世の中のシステムに、いちいちダメージを受けている自分が大嫌いだ。(p.180)
「募金怪しいからしない、募金してもあの子の収入になるわけではない、でも無視するのも後味悪いもんな」
こんな風に言う友人の気持ちもわからなくはない。
私も街頭募金はしたことがないし、募金をしている人の目の前を通る時は少し心が痛むような感覚になる。
「あの人は募金もしない薄情な奴だ」と思われるくらいなら、少しでも募金して感謝される方が気が楽だ。
こんなことを考えていること自体が「世の中のシステム」に動かされている証拠ではないだろうか。
自分の意思で行動していることが、実は社会に動かされているだけなのかも…こんなことを考えさせられる「アスファルト」のこのシーンが私は印象深く思いました!
高校生たちの気持ちに共感してしまう「樹氷の街」
個人的に好きな作品になったのが「樹氷の街」です。
何が好きなのかなと考えてみたら、この物語に出てくる全員の気持ちに共感できたことだと思いました。
自分からピアノの演奏者に立候補した手前、下手でも後に引けなくなった倉田の気持ち。
そんな彼女に「いい加減にしてほしい」と感じてしまうクラスの女子の気持ち。
何とかクラスをまとめたいし倉田にも頑張ってほしいと思う指揮者の天木の気持ちなど、出てくる人物たちの言葉や行動に「わかる!」と思ってしまいました。
すっちー
合唱コンクールはどうなるのか、天木をはじめとした登場人物たちの関係性はどう変わっていくのかなど見所が多い作品になっているので、ぜひあなたにも読んでいただきたいなと思います。
おわりに:あなたのお気に入りを見つけてほしい|『光待つ場所へ』まとめ
辻村深月さんの著書『光待つ場所へ』の紹介、読んだ感想をまとめていきました。
少しでも本書に興味を持っていただけたら嬉しいです!
短編集の魅力は、次々と新しいお話を読むことができテンポが良く、1冊なのに読み応えがあること。
ぜひあなたも辻村さんの世界観を堪能していただければと思います。
今回紹介した本はこちら↓
すっちー