この記事では高村透さんの著書『幸せは口座に預けることはできません はみだし銀行員の業務日誌』の紹介、読んだ感想をまとめています。
またもや母親のオススメで読み始めた『幸せは口座に預けることはできません』という一冊。
「感動したいならこの本!『優しい死神の飼い方』『黒猫の小夜曲』(知念実希人)」で紹介した2冊とシチュエーション?は似ていて、未来からやってきた未来人が二十一世紀の調査のために銀行員となって人として?成長していくお話です。
ほっこりする人情ストーリーをベースに恋愛要素や消えたお金の行方を探す謎解き的なお話もあり、この一冊で読書をかなり楽しむことができました!
『幸せは口座に預けることはできません』は以下に当てはまる方にオススメしています。
- サクッと小説を読みたい方
- 心温まる作品が好きな方
- ちょっと笑えるお話が読みたい方
- 銀行や営業のお仕事をしている方
- ツンデレ女子が好きな方
すっちー
Contents
『幸せは口座に預けることはできません』本の概要
失敗ばかりでクビを恐れながら銀行に勤める青年カズマ。内気ではあるが、一般的な銀行員の常識にとらわれない、ユニークで人間味豊かな男だ。幼い娘の口座をつくりに来た母親、遺産相続を巡って争う姉妹…。カズマのもとには、金にまつわる悩みを抱えた人々が次々と訪れる。「営業ノルマとか、本社の指示とか、他銀行との競合とか、お客には関係ないじゃないか」カズマはそうつぶやきながら、金銭じゃ買えない温かな幸せを、穏やかな笑顔とともにお客たちに与えつづける。
(引用:「BOOK」データベース)
『幸せは口座に預けることはできません はみだし銀行員の業務日誌』は、2018年11月24日にメディアワークス文庫から出版された文庫本です。
ページ数は約300pで読書を普段からしている方であればサクッと読める程度の文章量になっています。
ストーリーは当然魅力的なのですが、表紙のイラストもかなり素敵で本を持っていると気分が上がる一冊だなと感じました┌|*∵|┘
すっちー
高村透さんの著書紹介
高村透さんは『幸せは口座に預けることはできません はみだし銀行員の業務日誌』以外にも、2002年に小説処女作『光の太陽』が新聞紙面に掲載されており、2010年には電撃文庫より『理想の彼女のつくりかた』を出版。
その他にもSFや青春、会社などジャンルを問わずに執筆活動をしている作家さんです!
すっちー
『幸せは口座に預けることはできません』感想
『幸せは口座に預けることはできません はみだし銀行員の業務日誌』を読んだ感想やポイントを大きく分けると以下の3つになります。
- 未来人の主人公に人間味があっていい
- AIと人間の仕事について考えさせられる
- 未来人ならではの”無知”にクスッとできる
未来人の主人公に人間味があっていい
「未来人って先進的な世界で過ごしているから人間味とか極端になくなっていそう」とあなたも思っていたりしませんか?
すっちー
『幸せは口座に預けることはできません』で描かれている未来の世界は、生まれる前に顔を選ぶことができるような発展した世界!
そんな世界で生まれた主人公のカズマは、思っていたよりも人間味あふれる青年でした。
カズマの人間味を感じた部分が以下の引用です。
「体験的なことは言えませんが、それでも想像するに父親の不在というのは子供にとって孤独を感じるに十分な要素になると思います。その孤独は未来になっても埋まらない。けれどあなたの思いを未来へ預けることによって、彩夏ちゃんがこの通帳を手にしたとき、もしかしたら何もない空洞だと思っていた孤独のなかから生きることの悲しみとよろこびを知るかもしれません。そうなればいい。きっとそれを教えることが親のつとめだと思いますから」(p.54)
同僚の亜梨沙が「自分が何のために銀行員をやっているのか」わからなくなった時に、カズマがかけた言葉。
「靴と似ているのかもしれない。靴は履いているときその存在を忘れるけれど、それは確実にぼくたちの足にあって、ぼくたちの歩みを助けている。あのね、ぼく自身、何のために銀行員をやっているのか、実のところよくわかっていない。明美さんだって、課長だって、きっとみんなよくわからないまま働いている。それでいいんじゃないかな。わからないからぼくらは考えつづける。考えつづけるからぼくらは変わることができて、また、進歩することもできる。そうやってぼくたちは歩んでゆく。でもね、ずっとひとりで考えてちゃいけない。それは必ず悪い道を指し示す。だからね、たまにはぼくを頼ってよ。できないことはお互いに協力して対処し、どうしたらよかったのかあとでふたりで考えよう。そうやっていけば、きっとよりよいところにぼくたちは行けると思う」(p.115)
亜梨沙に言っているはずなのに、読み手に語りかけるようなこのセリフは印象的でした。
話している内容も納得できることばかりで、こんな同僚がいたら心強いな〜というか惚れちゃうな〜とか思いました(笑)
AIと人間の仕事について考えさせられる
最近はAIが登場して「◯◯年後には消えている仕事」なんてよく聞くかと思います。
銀行員もそのうちAIに仕事を取られてなくなってしまうのではないか、そんな内容も本書には登場していました。
そんな中で亜梨沙が、営業用AIはきっと人間には勝てないと言います。
その理由が個人的に好きだったので紹介したいと思います。
「そのうち銀行員はいらなくなるね」とぼくが言うと、亜梨沙は片側に体重を乗せるようにして小首をかしげる。その弾みに肩から流されていたひと房の髪がぶらんと宙で揺れ動いた。しばらく考え込んだあと、彼女は唇に指を当てながら言った。
「でも営業はAIとか機械とかには真似できないわ。いずれそれっぽいシステムが開発されて、営業のようなことをAIがするようになっても、きっと人間には勝てない」
「なぜ?」
「断りやすいもの。AIに押しの強さを求めるのは酷な話でしょう」
「なるほど」(p.80)
私も思わず「なるほど」と納得してしまう会話でした。
本書の中で亜梨沙は頻繁に出て行くるキャラで個性的な子なので、ぜひ読む際には彼女のセリフや行動に注目してみてください。
未来人ならではの”無知”にクスッとできる
現代を生きている私たちであれば知っている「クビ」という言葉、どうやら未来では使用されていないようでカズマはクビのことを打ち首、切腹の類だと本気で思っていました。
「営業成績が悪いとクビになるらしい、クビになったら生きていけない」といったシチュエーションが何回かあり、読むたびにクスッと笑える要素でした。
こんな未来人ならではの「無知」が起こす笑いが要所にあるので楽しめること間違いなしです!
物語の後半ではとんでもない言葉を、意味を間違えたまま使ってしまい亜梨沙を怒らせてしまうシーンもあるので読む方はお楽しみに(笑)
以上が『幸せは口座に預けることはできません』の感想でした。
おわりに:感動待ったなしの作品に大満足でした!
高村透さんの著書『幸せは口座に預けることはできません はみだし銀行員の業務日誌』の紹介、読んだ感想をまとめていきました。
少しでも本書に興味を持っていただけたら嬉しいです!
少し笑える要素がありつつも全体的に心温まるエピソードが多い本書、一冊でいろんな感情を味わうことができる作品だったと振り返ると思いますね。
文章量は多くないためサクッと読めるのに、中身が充実しているのでかなりオススメできる小説です。
読後感もバッチリいいのでぜひ一度読んでみてくださいね〜!
今回紹介した本はこちら↓
すっちー